1.特許出願非公開制度とは?
特許出願非公開制度とは、安全保障上重要な技術が国外へ流出することを防ぐために導入された制度です。
01-1.なぜ特許なのに非公開にするのか?
従来の特許制度では、特許出願から1年半が経過すると、世界中にその内容が「公開」され、誰でも閲覧できるのが大原則でした。しかし、これでは軍事転用が可能な最先端の技術までオープンになってしまい、国家の安全を脅かすリスクが生じます。そこで、特定の技術が外国に流出するのを防ぐために作られたのが「特許出願非公開制度」です。安全保障を守るために、あえて「特許を秘密にする」という新しい選択肢が加わりました。
1-2.制度が導入された背景(経済安全保障法)
この制度は、近年注目されている「経済安全保障推進法」に基づいて導入されました。AIや半導体、量子技術といった最先端のテクノロジーは、民間だけでなく軍事技術(デュアルユース)にも直結します。アメリカや欧州など、主要な先進国ではすでに同様の「秘密特許制度」が運用されており、日本も国際的な安全保障の足並みを揃え、国内の重要な技術基盤を守るためにこの制度を本格始動させました。
2.非公開の対象となる「技術」
2-1.どのような技術が対象になる?
すべての特許出願が非公開になるわけではありません。
対象となるのは、特許出願の明細書等に記載された発明が国の安全を揺るがしかねない「特定技術分野」に該当するとされたものです。具体的には、核兵器の開発に繋がる技術、最先端の武器・兵器に直結する技術、宇宙関連技術、先端半導体技術、量子技術、暗号通信技術、暗号通信技術、ドローン及びサイバーセキュリティ技術などが挙げられます(2-2をご参照ください。)。
特に近年は、民間技術が軍事利用されるケースも増えており、中小企業やスタートアップの技術が対象になる可能性も十分あります。例えば、AI画像解析技術や通信制御技術など、一見すると一般用途に見える技術でも、軍事転用可能性があると判断される場合があります。
対象となるのは、特許出願の明細書等に記載された発明が国の安全を揺るがしかねない「特定技術分野」に該当するとされたものです。具体的には、核兵器の開発に繋がる技術、最先端の武器・兵器に直結する技術、宇宙関連技術、先端半導体技術、量子技術、暗号通信技術、暗号通信技術、ドローン及びサイバーセキュリティ技術などが挙げられます(2-2をご参照ください。)。
特に近年は、民間技術が軍事利用されるケースも増えており、中小企業やスタートアップの技術が対象になる可能性も十分あります。例えば、AI画像解析技術や通信制御技術など、一見すると一般用途に見える技術でも、軍事転用可能性があると判断される場合があります。
2-2.自社の技術が含まれるか確認する方法
自社の特許出願が対象になるかどうかは、内閣府や特許庁が公開している以下のURLのページで確認できます。特にこのページのpdfの第1~4頁をご参照ください。
「特定技術分野及び付加要件の概要(令和7年1月1日施行)」
https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/suishinhou/patent/doc/tokutei_gijutsu_bunya.pdf
事前に対象かどうか不安な場合は、弁理士などの専門家に相談するか、公的な相談窓口を利用するのが確実です。
「特定技術分野及び付加要件の概要(令和7年1月1日施行)」
https://www.cao.go.jp/keizai_anzen_hosho/suishinhou/patent/doc/tokutei_gijutsu_bunya.pdf
事前に対象かどうか不安な場合は、弁理士などの専門家に相談するか、公的な相談窓口を利用するのが確実です。
3.出願から非公開決定までの流れ
通常の特許出願と同じように特許庁へ特許出願があると、ここから「2段階」の審査が行われます。まずステップ1として、特許庁が、特許出願の明細書等に記載された発明について国際特許分類に基づき「特定技術分野」に該当するかどうかをチェック(一次スクリーニング)します。
該当すると特許庁が判断した場合、ステップ2として内閣府に特許出願書類が送られ、国家の安全保障上の観点から、内閣府において本当に非公開にするべきかどうか本審査(保全審査)が行われます。
該当すると特許庁が判断した場合、ステップ2として内閣府に特許出願書類が送られ、国家の安全保障上の観点から、内閣府において本当に非公開にするべきかどうか本審査(保全審査)が行われます。
3-2.非公開(保全指定)が決まったらどうなる?
内閣府の保全審査で「非公開にする」と決定することを「保全指定」と呼びます。保全指定を受けると、特許庁による出願公開はされず、出願内容は非公開とされます。また、審査そのものも一時的にストップ(保留)されます。
この保全指定は定期的に見直され、技術の陳腐化や情勢の変化によって「もう公開しても安全」と判断されれば、指定が解除されて通常の特許審査へと戻ります。
この保全指定は定期的に見直され、技術の陳腐化や情勢の変化によって「もう公開しても安全」と判断されれば、指定が解除されて通常の特許審査へと戻ります。
4.企業や開発者が知るべき「注意点」
4-1.外国への出願制限(海外特許の注意点)
この制度で最も注意すべきなのが「外国出願の制限」です。特定技術分野に属すると判断された発明(非公開の審査対象(一次審査を通過したもの)となった発明)は、原則として日本より先に外国へ出願すること(第一国出願)が禁止されます。また、日本国内で非公開の対象になる可能性がある技術は、原則として「まず日本に最初に出願(第一国出願)」しなければなりません。これを知らずに、先にアメリカや中国など海外へ直接出願してしまうと、日本の法律違反となりペナルティの対象になります。グローバルに事業を展開する企業や、海外の研究所と共同開発を行う場合は特に注意が必要です。
4-2.発明の開示や実施の制限(情報漏洩の禁止)
保全指定を受けた技術は、国から厳重な管理を求められます。特許内容を他人に話したり、インターネットに書き込んだりして漏洩させることは絶対に禁止です。また、その技術を使って自社で製品を作ったり(発明の実施)、他社にライセンスを許可したりする場合にも、事前に国の許可が必要になるケースがあります。自由にビジネスに活用できなくなる可能性があるため、社内での情報管理体制を強化しなければなりません。
例えば、アクセス権限の管理、社内データの暗号化、従業員教育、持ち出し制限など、多面的な対策が必要になります。特にスタートアップでは、少人数運営のため情報管理体制が十分整備されていないケースも多く、注意が必要です。
例えば、アクセス権限の管理、社内データの暗号化、従業員教育、持ち出し制限など、多面的な対策が必要になります。特にスタートアップでは、少人数運営のため情報管理体制が十分整備されていないケースも多く、注意が必要です。
5.制度のメリットと「補償金」の仕組み
5-1.技術が国によって守られるメリット
非公開になる最大のメリットは、ライバル企業や外国の組織に自社のコア技術を盗まれるリスクをなくせる点です。通常の特許は「独占権を得る代わりに技術をオープンにする」ものですが、この制度を使えば「独占権の権利枠を確保しつつ、中身は完全非公開」という最強の防衛が可能です。他国に模倣されるのを防ぎ、自社の圧倒的な技術的優位性(チョークポイント)を長期にわたって維持できます。
5-2.ビジネス制限に対する「補償金」とは?
技術が非公開になると、特許の公開を前提としたビジネスやライセンス契約ができなくなり、企業側が損失を被ることがあります。そのため、この制度には国から「補償金」が支払われる仕組みが用意されています。非公開にされたことで「本来得られるはずだった利益が得られなかった」と証明できれば、その通常生じるべき損失を通年の範囲で国が補償してくれます。これにより、企業の経済的な不利益が軽減される可能性があります。